文章作成ソフトのすすめ 最良の書籍作成方法を探る

電子書籍の作成の手順と言っても、いろいろな方法がありますが、本書で扱っているのは、WordやOpen Officeの文書作成ソフトウェアから、PDFやePUBの電子書籍を作成する方法です。

簡単にいうと、初心者には「レイアウト」「フォーマット」「お手軽さ」という3つの観点から、個人出版は文書作成ソフトからPDFやePUBを作成する方法がベストだと思っているからです。より具体的に説明した方がイメージしやすいでしょうから、もう少し詳しく解説していきますね。

電子書籍のレイアウトについて考えてみる

まずレイアウトの問題から、Indesignではなく文章作成ソフトウェアを推奨します。なぜ文章作成ソフトウェアを推奨するのかという、4つの理由をご紹介しましょう。

●1.マルチプラットフォーム化によるレイアウトコストの観点
電子書籍はデバイスがないと見ることができません。少しでも多くの人に電子書籍を読んでもらいたいと思うのならば、様々な端末に電子書籍を対応させていく必要があります。マルチ展開は販売促進力をあげる重要なポイントです。そこで、まず全体像としてどこまで端末を対応させるのかを考えます。全体像を捉えておかないと後々苦労します。多くのITやゲームの業界が当然のごとくやっているように、マルチプラットフォーム化するにあたり、効率的な設計を考えます。

このあたりは出版業界ではなく、ソフトウェア業界の論理から考えていった方がスマートでしょう。

最初に注目すべきはiPhoneやAndroidなど、スマートフォンのレイアウトです。ミニマムなディスプレイが一番レイアウトに融通が効かず不自由だからです。

果たしてどこまでレイアウトができるのでしょうか。

スマートフォンはレイアウトに凝ることができず、1枚の画像を表示するぐらいが関の山ではないでしょうか。

もちろん、そのような方法を取らない選択肢もあります。たとえば、作成した電子書籍はスマートフォンに対応させないという選択肢があります。ただし、スマートフォン市場が急速に拡大する中、このスマートフォンに対応させないという選択肢は、もったいなさすぎる気がします。

また、電子書籍のリーダーごとに、レイアウトやデータを分けていく方法もあります。ただし、その場合すべての端末に電子書籍を対応させるのに、どのぐらいコストがかかるのかという点を考慮しなければなりません。企業ならばともかく、個人がひとりでやるのは、少し大変かもしれません。電子書籍をバージョンアップ書籍やβ版リリースにするのならば、なおさらですし、電子書籍は後ほどデータを修正できますから、その度にデータを修正する手間を考えますと、微調整に時間を費やすことになってしまうという気がします。

また、データを分割するということは、当然ミスが出やすい電子書籍の制作環境を自ら作り出しているわけです。どこかのデータだけが文字化けしたり、一部レイアウトがおかしかったりという事態が生じやすく、データや文章の扱いに慣れている人でも、このようなミスをしがちですから、不慣れな人がやればなおさらです。

要はマルチプラットフォーム展開するにあたり、レイアウトに凝るのは、大変だということです。

●2.ePUBの特性
ePUBの特性は、既存の雑誌のレイアウトより、ブログのレイアウトに考え方や見栄えが近いのではないでしょうか。PDFとePUBのレイアウトをまるで違うものにする場合も、コスト面の問題が出てきます。

●3.コスト意識
レイアウトを凝れば当然、レイアウトのデザイン費が別途生じます。個人出版する場合、そのコストをどのように捻出していくのかも、ひとつの問題です。投資額が大きくなれば、趣味で気軽に出版とはいかなくなります。

●4.本作成のプライオリティの観点から
大事なのは文章の内容であり、見栄えやレイアウトは二の次でしょう。個人出版する場合、組織ではありませんから、テキストという最重要プライオリティ(優先項目)に集中しましょう。

もちろん、将来的にレイアウトソフトが性能を向上してくるでしょう。おそらく1つのデータでマルチデバイス対応にしたものがでるでしょう。それはそれでとても喜ばしいことです。ただ、現状が取り巻く様々な問題を考慮していくと、当面、個人出版は文章作成ソフトを利用した方がいいのではないでしょうか。このような主旨から、以後、本書ではIndesignという言葉は登場しませんので、あしからずご了承ください。

個人出版のフォーマットについて考えてみる

次に出力フォーマットについてです。XMDF などの日本の電子書籍フォーマットは、個人にオープンではありません。また、販売サイトや特定のアプリケーションに依存する形体では、作成した書籍を多角的に展開しづらく、これは書籍を販売していく上で致命的です。そこで一番柔軟に対応できるであろう、PDFやePUBという選択肢を取らざる得ない状況にある気がします。漫画であれば、Jpegなどの形体もありでしょう。

フットワーク軽く始められる方法を考えてみる

Open Officeは無料ですし、多くの人がWordぐらいは所有しているでしょう。文章作成ソフトであれば、初期投資もなく始められます。文章作成ソフトはPDF やePUBはもちろん、現在、まだ国内で販売できませんが、将来的にAmazonキンドルにも展開しやすいと思われます。

電子書籍のプラットフォームや拡張子、制作環境やコスト面などを複合的に考えていくと、当面、電子書籍は文章作成ソフトで作るのがいいのではないかという、自然な結論に到達しました。ただ、もうひとつ別の方法があります。それは後ほどお話しましょう。

前置きはこのぐらいにして、電子書籍の具体的な作り方に入っていきましょう。


発行日2011.3.1
更新日2012.8.1
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